【REVIEW】 “ツバキ文具店”

 

誰かに手紙を書くということ

手紙を書くことは、楽しくて、疲れて、面倒くさい。最近は手紙を書く頻度も減ったが、友達に何か贈り物をするときに添えたり、ファンレターを書いたりしている(K-POPのオタクになってから2年経った)。ファンレターに関しては違う言語なので、調べながら書く。時間はかかるが、ポストに入れるときの高揚感は何とも言えない。
“ツバキ文具店”は、文具店の店主である鳩子が、依頼者から手紙の代書を請け負う『代書屋』の物語である。
依頼してくる人たちは、なにも自分が楽したいから依頼しているのではない。それぞれ自分で書けない、書かない事情が存在する。亡くなった人からの手紙を待っている母を楽にしてあげたい息子や、一通の手紙で確実に縁を切りたい人など、その人たちが持つ背景は様々だ。
よくよく考えると、手紙には思ったよりも責任が伴うのかもしれない。
まず、残るという点。相手の家に、物が届くわけである。形あるものを送るということは、もう忘れてほしい内容をでも相手の家にまだ置いてあるのなら読み返す可能性だってあるだろう。そして投げっぱなしになる点。対面で話すこととLINEなどのツールは比較されがちだが、手紙はずば抜けて『相手が自分の言葉を受け取ったか』が見えない。投げてはみたものの、自分が放ったボールは果たしてキャッチされているのか。例え届いていたとしても時差が生まれるため、内容はどうしても一方的になってしまう。鳩子はこういった手紙そのものが持つ厄介ともいえる部分に加えて、依頼者の繊細な依頼にこたえていく。要望に沿った筆圧や文体、そして便箋やペン、封をするシールまで選んでいく。手紙を書く間、鳩子の中には本来手紙を書くはずだった人がいるのだ。
縁を繋ぐことも断つこともできる手紙。机に向かって丁寧に文字を連ねていくその作業は、自分の気持ちに芯を生んでくれる。日常のやり取りはもちろん、ここぞという時に使いたいものだ。

 

ツバキ文具店

著者:小川糸
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written by : NANAKO
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